インディー(20)

近松良之から何を吸収しただろうか?


表現主義?


ニーチェ?


ハイデッガー?

その当時はまだハイデッガーのナチスへの関与については暴かれていなかった。


和辻哲郎
風土論?

ジンメル


禅?


一緒に座禅をさせられたこともあったが、感じるところはなかった。


近松は、大蓮出身のため、中華料理が好きだった。
彼は、中華ではなく中国料理だと繰り返した。

たばこはキャメルと決まっていた。


教授の職を捨てて千葉の館山で養護施設を設立した。


学生のころは何度か手伝いに行ったことがある。


横浜の中華街で買った揚げパンや腸詰めを持って行ってやると、ガキのようにむしゃぶり食っていたのを良く覚えている。
私も負けずに勢い良く食べたものだ。


就職してからすぐに私の叔父が、アメリカで交通事故で死亡した。

叔父は、生涯独身で、子供も無く、アメリカ北部の片田舎のレストランで日本料理屋の支配人として、静かに暮らしていた。

いくらかの保険金が下りて、私の手元に数百万の金が舞い込んだ。
近松が、その一部を寄付してほしいと言うので、養護施設に100万ほど寄付をした。


それ以来、近松とは疎遠になってしまった。


私の事を評して
「今は、猫だが、本質はライオンだ。君は私の弟子であり続けることはない」と良く言っていた。


ライオンになれたとは、まだ言えないが、彼の弟子でなくなったことは間違いない。


彼の取り巻きは、情けなくてやさしい、間違いをすぐに起こすだらしのない男ばかりだった。


近松から、何を学び取ったか?

歌舞伎の原形?
出雲の阿国?

芸能の原初形態?

差別について?

当時は
唯我論的真空の世界からの脱却が、私のメインテーマだった。

近松が、きっかけを与えてくれたのは間違いない。


(つづく)




© Rakuten Group, Inc.